2021.6.29
分割協議のとき、知っておきたい税務法務 その1
申告期限までに分割協議を済ませていないと、税金面での優遇が受けられないなど、不利な点がいくつか生じます。十分な話し合いで、できるだけ早く解決したいものです。
(1)分割協議が申告期限までに決まらないと不利なこと
民法上、遺産分割協議をいつまでに決めなければならない、という期限はありませんが、相続税の申告期限が相続開始から10ヶ月以内と定められているため、できればこの期限に間に合うように分割を確定させることが望ましいといえます。また、税法上、未分割のままでは受けられない特例(ただし、3年以内に分割を確定させれば、遡って適用を受けられます)がいくつかあるので、経済上(税額の大小)も申告期限前、遅くとも申告期限から3年以内に分割を確定させた方が有利となります。
まずここでは、税金面でどんな不利な点があるのかを説明しておきましょう。
①配偶者の税額軽減が受けられない
配偶者が法定相続分以上の財産を相続した場合に、法定相続分と1憶6000万円のいずれか多い額までに相当する分には税金をかけないという税額軽減の制度があります。分割協議は申告期限までに決めるのが原則ですが、決まらない場合には、申告期限から3年以内に決めることが、この特例を受ける前提条件となっています。その期限内であれば、配偶者の税額軽減が受けられますが、それ以降では裁判所係争以外の場合には受けられませんので、大損をしてしまうことになります。
②小規模宅地等の評価減が受けられない
宅地を相続する場合には、330㎡までの居住用もしくは400㎡までの事業用の土地は50%もしくは80%まで相続税の評価が安くなるという制度があります。この小規模宅地等の評価減も、申告期限まで、ないしは期限後3年までに分割協議が決まらないと受けられません。この制度が適用できないと大変不利になります。